メッセージ 渡辺 弘美

渡辺 弘美

アマゾン ジャパン株式会社
渉外本部本部長

ICTがなし得たこと、ICTで出来たこと

未曾有の東日本大震災で被災された多くの皆様に心よりお見舞い申し上げます。
私のところには今も被災地の方から度々連絡を頂戴しますが、復興に向けた懸命なご努力に敬服すると同時に、未だ不自由な生活をなさっておられる方が多くいらっしゃる現実に心を痛めております。アマゾンの社員有志は、これまで15回にわたり被災地でボランティア活動を継続しておりますが、被災地の復興はまだ緒についたばかりで、今後も継続的な支援が必要であることを毎回実感しております。

 アマゾンでは、震災の翌日からAmazon Web Services(AWS)のチームが震災関係の情報提供や義援金受付を行うウェブサービスを提供されている方々に対して、クラウドサービス(仮想サーバ、仮想ストレージ)の無償支援を行いました。アマゾンの社員だけでなく、AWSのユーザーグループ(JAWS-UG)による不眠不休のボランティアがなければ実現できませんでした。

 アマゾンのサイトを通じた義援金の募集については、日本のアマゾンの社員だけでなく、他国のアマゾンの社員からも進んで協力があり、アマゾンの世界各国のサイト上で行うことができました。

 今でも「たすけあおうNippon」の名の下で、被災された方と支援したい方をつなぐ「ほしい物リスト」や、被災地の地域経済の復興を支援する「食べて・飲んで・使って」という支援プログラムを継続して行っております。ソーシャルメディアの力により、「ほしい物リスト」による新しい支援の形が広く知られ、多くの方々からの賛同と支援をいただきました。しかし、「ほしい物リスト」による支援はICTの力だけで実現できたものではありません。大震災直後の混乱の中で、被災地でリーダーシップを取られた多くの方々の強い意志や、燃料不足と戦いながら物流経路の確保にご尽力された関係者の方々などの協力なくしてはなし得ない事でした。
ICTの力を最大限に生かしてスピーディーに支援できたものもあれば、ICTの力だけでは実現し得ないがICTの力があってこそ世界中から支援を受けることができたものもあったということは、私にとっても貴重な経験です。

原体験を風化させずに将来に備えて共有

ICTを利用して東日本大震災による被災支援や復興支援に携わった経験を持っていらっしゃる方々は、その貴重な原体験を余すことなく提供し、国を越え、時間を越えて、多くの人々と共有することが求められているのではないかと感じます。本当はもっと業態や官民などの垣根を越えてICTを利用すれば、よりよい支援ができた領域があったのかもしれません。震災から1年半以上が経過しました。時間の経過とともに貴重な経験や反省点が風化していく恐れがあります。今回、ABCにより開催される震災復興をテーマとしたICT ERAが、当時のことを思い起こしながら、関係者の皆様が語り合い、語り継いでいく場になることを願って止みません。

略歴

経済産業省で長年にわたりIT政策に従事。JETROニューヨークセンター在任中に日経ビジネスオンラインで「渡辺弘美のIT時評」を連載。2008年よりアマゾンジャパン渉外本部本部長。東日本大震災以後、被災された方々にAmazon.co.jpのほしい物リストを利用した支援を実施し続けている。著書に『ウェブを変える10の破壊的トレンド』など。GLOCOM客員研究員、早稲田大学IT戦略研究所客員研究員。東京工業大卒。