イベント開催報告

萩ホール

ICTによる震災復興をテーマとした講演が行われる萩ホールでは、ABC初の地方開催にも関わらず、
多くの方々が集まりました。

最初は、東北大学 副学長の青木孝文先生による基調講演。ICTを活用した身元確認に関する様々な取り組み
と、将来の大規模災害に備え、より高度な情報技術活用の重要性について解説して頂きました。

続いて、KDDI株式会社 代表取締役会長の小野寺正様、インテル株式会社 取締役副社長の宗像義恵様、
日本マイクロソフト株式会社 代表執行役社長の樋口泰行様によるご講演がありました。
今回の震災復興に対する企業としての試みと、トレンドや様々な事例からICTによる震災復興支援の可能性と方向性について、
キャリア、チップベンダー、ソフトウェアベンダー様々な立場からの視点でご紹介いただきました。

そして、午後1番目のセッションは、日本Androidの会の丸山会長による基調講演。
ITと新しい社会の未来を考え、その担い手と期待される若者3名をご紹介頂き、登壇して頂きました。
まずは、特定非営利活動法人 natural science 理事の大草芳江様。知的好奇心がもたらす心豊かな社会の創造に向けて、
現状の課題と、結果に至るまでのプロセスを可視化・共有化することを目的とした活動についてご紹介頂きました。
続いて、灘高生の2人、矢倉大夢様、Satoru Tehu Cho (張 惺)様。ITを駆使して活躍されている高校生の視点から
災害や復興にICTはどのように活用できるのか紹介して頂きました。

2番目のセッションは、ABCでは毎回登壇していただいている総務省の谷脇康彦様によるご講演。東日本大震災で得た教訓をもとに、
総務省が取り組んでいる情報流通連携基盤の構築と、防災対策の強化などの取り組みについて解説して頂きました。

3番目のセッションは、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの松木彰様によるご講演。「復興」は「復旧」から続く連続した
取り組みと捉え、タブレット端末を農業に適用した事例など、様々な具体的な取り組みについてご紹介頂きました。

4番目のセッションは、クアルコムジャパン株式会社の山田純様によるご講演。被災地に多く取り残された高齢者の健康管理や見守り支援に
モバイル技術を適用した取り組みと、適用の際の課題について、具体的な事例を元に解説して頂きました。

5番目のセッションは、Hack For Japanの高橋憲一様によるご講演。震災復興を継続的に支援するためのIT開発を支えるコミュニティとして、
昨年3月11日の直後に発足した「Hack For Japan」のこれまで活動と、未来に向けた取り組みについてご紹介頂きました。

6番目のセッションは、アマゾンデータサービスジャパン株式会社の小島英揮様によるご講演でした。
リーンスタートアップの手法に学びながら、ビジネス再生プランとそれを支えるクラウドの価値について
アマゾンでの事例などをもとに解説して頂きました。

最後は、BEBフォーラムを主宰されているアットマークベンチャー株式会社の大津山訓男様によるご講演でした。
震災復興活動で発揮したハッカソンなどソシアルパワーによるサービスプロトモデルをAndroidナビやデジタルサイネージ分野
でのアジア展開可能性を事例中心に解説して頂きました。

震災復興トラック

震災復興トラックは、いずれもの講演も、自分たちの持っている技術を少しでも復興支援に活かしたいという”想い”が感じられるセッションとなりました。

●被災地である地元の大学や企業からは実体験に基づいた講演を行っていただきました

  •  ・東北IT新生コンソーシアムの庄司さんと東北大学IIS研究センターより「ITペアリング復興」の紹介 →主に仙台市など都市部のIT企業と被災地の産業を組み合わせた復興支援活動について、具体的に説明がありました。
  •  ・東北大学災害科学国際研究所の柴山先生から「東日本大震災アーカイブデータ利活用」の紹介 →建物の被害状況の確認および集計、伝達のためにタブレットが威力を発揮した点や、他地域との連携によりデータが蓄積された経緯など、今後に向けて有効なメッセージを発信していただきました。
  •  ・宮城大学の富樫先生から、宮城大学が取り組んでいる「広域地域医療連携」の紹介 →気仙沼で3000人もいる寝たきりの方のケアに、全国から延べ700人の方が支援してくれたが、その際に情報共有が非常に重要でIT技術が役立った、というお話でした。聴講者からは「現場での頑張りに頭が下がる思いです。」とのコメントがありました。
  •  ・NEC復興支援推進室の影山さんより、被災地での復興支援活動の紹介 →仮設住宅の地域で、テレビ回線の空き領域を利用して自分たちで番組を作り、放送し、視聴するという試みについての紹介などがあり、聴講者から「技術屋としてできる震災復興の筆頭と感じた」とのコメントもありました。

●地元以外の企業や団体からも震災復興への取り組みについてご講演いただきました

  •  ・スマートドライブメーター製作委員会の牧内さんより、面段差計測アプリ「BumpRecorder」から見た東北地方の被災状況と復興状況の説明 →スマートフォンの加速度センサーとGPSを用いて、走行中の自動車の上下動から道路の凹凸状況を計測するアプリ「BumpRecorder」は、聴講者から「頻繁に被災地に出かけているのだが、早速ダウンロードしてみたい」という声が出ていました。
  •  ・Earthquake visualization projectの栗元さんと小田さんから、androidを使用したクラウド地震計と地震波動visualization projectの紹介 →MEMSを使用し、安価で従来の地震計に近い精度で測定が可能なクラウド地震計を開発したというご紹介でした。これを用いて挙動解析を一緒に行ってくれるパートナーを探しているとのことでした。
  •  ・KDDIの伊藤さんからは、災害時聴覚障害者支援システムの紹介 →災害時に、避難のアナウンスを聞くことができない聴覚障害者のために、LEDを使用することで安価に開発可能となった、情報表示システムをご紹介いただきました。
  •  ・ウェブテクノロジの西田さんより、スマートフォンとクラウドを活用した放射線量測定システムの紹介 →簡易に広範囲での測定、また遠隔操作での測定を可能にしたクラウド型の放射線量測定システムのご紹介でした。被災地の方からは価格に関する質問が出るなど、ニーズの高さがうかがえました。